ここでは、国語学的な立場から、山口県各地で使われているさまざまな方言をほぼ単一の方言体系とみなしています。ただし歴史的・地理的・文化的な条件から、山口・防府・徳地・小郡・萩・徳山など県央部（山口県の中央部）に残る方言を、近隣各県の方言の影響が少ない、比較的古くからある「防長方言」とする立場に立っています。したがって、この地域の方言を一応「標準的な山口弁」として記述していることに、他の地域にお住まいの方のご理解をいただきたいと存じます。 連母音融合（れんぼいんゆうごう）などの音韻体系は県央部のものを例示的に掲げていますが、それぞれの題材は、ほぼ全県に共通 するものを中心に心がけました。語彙（ごい）・表現法などで地域的・年代的に異なるものは、なるべくそのことに触れるようにしています。 　　　　　
　もとより、ここでは、どの話から読んでいただいても良いように、よもやま話としてまとめています。気ままに読み進んでいくことが、退屈しないための最も良い方法かもしれません。けれども、全ての話を読み終えた時、みなさんは、きっと、かなりの山口弁通 になっておられることでしょう。
　この項をお読みになった方が、心のふるさとの言葉として、山口弁にさらなる愛着を持ってくださることを願っています。